1. 植物-植食性昆虫-その天敵の3者間、およびそれに二次天敵を加えた4者間の個体群相互作用を記述する2種類の微分方程式型の数理モデルを作成し、食植者の植物発見・利用効率、植物側の抵抗性と食植者の増殖効率、食植者の天敵あるいはその二次天敵の攻撃あるいは増殖効率などの基本パラメータが植物現存量のレベルやシステム全体の安定性に対して基本的にどのように影響するかを、現実の自然生態系の特性を考慮したコンピュータシミュレーションによって解明した。 2. カガノアザミおよびヤナギ類のそれぞれの自然植生上の昆虫群集についての継続調査データをもとに、野外における食植性昆虫群集の実態解析を行った。どちらの場合も、多種の植食者が同一寄主上に安定に共存していること、種数に関しては広食者>狭食者であるが個体数では狭食者>広食者であること、そして種別の密度は概してきわめて低く種間競争は通常起こっていないことが明らかとなった。別に、邦産チョウ類226種について食性や分布などの生態情報をデータベース化して比較解析を進め、その食餌植物は67科にわたる広がりを示すが、全種の80%は単一科しか食わない狭食性である一方、ごく近縁で分布が重なる同属種間では餌植物種を異にする例が多いことを明らかにした。 3. 従来の競争理論では説明できないこのようなごく近縁な種間でのすみわけ現象の説明として交尾干渉と天敵回避戦略の二つの要因を想定し、チョウ類の例を参照しつつ、それぞれの可能性と成立条件について論証した。
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