研究概要 |
今年度は挿木における発芽および発根とサイトカイニン含量の変化との関係を検討した。その結果は以下の通りである。 1.3月下旬に採取した桑枝条を先端部,中央部,基部の三部分に分けて,水道水を満たした200mlのビーカーに挿木した。実験期間は挿木から5週目までとした。腋芽の動きは先端部において最も早く,挿木後2日目で膨芽の状態となり,その生育は中央部,基部の順に遅れた。しかし,2週目の生長状態は中央部>先端部>基部の順であったが,これが3週目からは基部>中央部>先端部の順に生長の促進が見られ,この状態が実験終了時まで続き,基・中央の両部と先端部との差が大きくなった。 2.検出されたサイトカイニンはゼアチン(Z),ゼアチンリボシド(ZR),イソペンテニルアデノシン(IPA),イソペンテニルアデニン(2iP)の4種類であった。まず,Z含量は実験期間を通じて先端部>中央部>基部の順に少なくなった。ZRとIPAの両含量もZ含量と同様に先端部>中央部>基部の順に少なくなる傾向を示したが,IPA含量はZ,ZRの両含量より少なかった。2iPは先端部と中央部に5週目を除き極少量検出された。 3.以上から,腋芽の発芽生長の盛んな先端部はサイトカイニン含量が多く,反対に発根の伸長生長はサイトカイニン含量の少ない基部ほど促進されることが認められた。また,先端部の発芽生長が停止したことは発根生長が見られないことによると,考えられるが,これらの結果はサイトカイニンとオーキシンのバランスが関連していると考えられる。
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