研究概要 |
天蚕培養胚子によるホルモン検定の浸漬法の可否を,^3H-ecdysoneによる追跡調査から検討し,その有効性が明らかとなった。そこで昨年に引き続き,産卵後19日から100日までの前幼虫に及ぼすimidazole化合物とecdysoneの影響を,内分泌器管を規制した結紮法により調査した。この結果から,休眠にはecdysteroidも関与する可能性が示唆されたので,産卵直後から11日目までの天蚕卵におけるホルモン量の消長をradioimmun assayにより測定した。一方,Antheraea属の種間近縁性についても,天蚕,柞蚕のタンパク質からみた種特異性を調査,つぎの結果を得た。 1)天蚕の休眠は,胸部に存在する抑制因子(RF)と腹部の成熟因子(MF)の拮抗作用で調節され,RFはimidazole化合物によって制御できる事実(Suzuki et al.,1990)を追認した。ただし,ecdysteroidは産卵後6日目胚子から19日目前幼虫に対し,発育抑制の効果のあることが認められた。このことと,天蚕の胚子期におけるecdysteroidの消長は,産卵後10日目に増大する事実から,休眠にはこのホルモンも関与することを考察した 2)天蚕,柞蚕の脂肪体雌特異タンパク質(24kDaペプチド;24K)の精製と性状調査を進め,アミノ酸組成とN-末端アミノ酸配列を決定したその結果卵巣外組織で合成されるビテロジェニンはアミノ酸ホモロジーがなく、新しいタンパク質であることが判った。24Kは5齢4日から9日にかけて脂肪体で合成され,その後脂肪体に貯蔵されることが明らかになった。天蚕,柞酸の体液,脂肪体および卵巣タンパク質にはいくつかの相違がみられた。そのうちのビテロジェニンとビテリンは2種間で分子量が異なっていたので精製して性状を調査した。柞蚕ビテロジェニンは分子量210,000のサブユニット,ビテロジェニンは170,000と45,000の2種のサブユニットから成ることが判った。ビテリンラージサブユニットのアミノ酸配列には2種間でホモロジーのあることが判明した。
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