ダイズ栽培における接種菌の根粒占有率向上のための根粒着生調節遺伝子(Rj)保有品種の根粒菌株選択能活用の可能性について検討した。 ダイズIAC-2(Rj_2Rj_3)とHill(Rj_4)を交配し、その後代からRj_2Rj_4遺伝子型系統を選抜し、その系統のRj_3遺伝子保有の有無について調査し、いずれのRj_2Rj_4遺伝子型系統にもこの遺伝子の存在が確認し、Rj_2とRj_3遺伝子は同一染色体上に存在すると推定した。 Rj_2Rj_3Rj_4遺伝子型ダイズを圃場栽培し、着生根粒から根粒菌を分離し、それらの分離菌がインドール酢酸産生能を有し、BTB培地をアルカリ化する菌とインドール酢酸産生能がなく、BTB培地をアルカリ化はするが、2週間以後逆に培地を酸性化する菌の2群に大別されることを示した。さらに、これらの分離根粒菌をそのコロニーの生理的形態的特徴によって9グループ分類したが、Rj_2Rj_3Rj_4遺伝子型ダイズによって特定のグループの根粒菌が選択されていることを立証することは出来なかった。一方、Uptake-hydogenaseを保有する菌株が高率に含まれるUSDA110血清型の根粒菌に対する各種Rj遺伝子型ダイズの選択性をポットおよび圃場試験で検討した結果、Rj_2Rj_3Rj_4遺伝子型ダイズのUSDA110血清型根粒菌に対する選択性が他のRj遺伝子型より大きいと判定した。 分離根粒菌のゲノムDNAのRFLPには、分離源ダイズのRj遺伝子型による特異性は認めることが出来なかった。しかし、nodulation typeや生理的特性によって分離された各グループに属する根粒菌間に一定の傾向が読み取れたので、ダイズ根粒菌のゲノムDNAの構造にはRj遺伝子保有ダイズに対する親和性やその他の生理的特性に関連した特異性が存在する可能性がある。
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