1.TおよびR型構造の酵素を含む結晶のX線結晶解析:昨年度、限られた条件下ではR型の結晶が得られることがわかったと報告したが、この結晶をすでに解析してあるT型酵素の構造パラメーターを用い、分子置換法を用いて解析したところ、T型及びR型酵素が1:1で同一結晶格子中に存在する珍しい結晶であることが判明した。これによりアロステリック酵素のT、R両状態の酵素構造を同一条件下で解明することが可能となった。すでに1.9オングストロームの解像度で解かれているT状態の構造をモデルとして精密化を行い、2.5オングストロームの解像度での両構造の分子構造を明らかにした。 2.アロステリック現象の分子機構:上記の解析により、T、R両状態ではサブユニットの三次構造はきわめて類似しており周辺のループ部分のみが異なることが明らかにされた。T状態ではサブユニットP軸間にあるFBP(フルクトース1、6-二燐酸、アロステリック)結合部位のアルギニン173、およびヒスチジン188の正電荷がサブユニット間の反発を引き起こしているがFBPの結合によりこれが解消されるためFBP結合部位を中心としてサブユニットが回転してR状態になり、その結果Q軸界面付近にある活性部位が変化して活性な形になることがわかった。これにより、アルギニン173、およびヒスチジン188を置換させた変異酵素の予備的なX線結晶解析の結果と共に、アロステリック現象が分子レベルで詳細に解明されたことになる。
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