1.ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)は85kDサブユニット(p85)と110kDサブユニット(p110)のヘテロダイマー構造をとっていて、p85が触媒サブユニットのp110の活性をコントロールしていると考えられている。PI3Kの活性調節の機構と活性調節の異常になった変異株構築に対する情報を得るために両者の結合領域を決定した。p110のアミノ末端にヒスチジン数個をつけ、ニッケル樹脂で精製できるようにした。 1)ヒスチジン-p110とp85の変異株をcos7細胞に発現させる。 2)p85とヒスチジンのついたp110の変異株をcos7細胞に発現させる。 の方法で、p85とp110の複合体を形成させ、ニッケル樹脂で精製した。p110と結合したp85をウエスタンブロッティングで検出した。その結果、p85では結合に必要な領域をp85の2つのSH2領域(増殖因子受容体などと結合する領域)の中央部約80アミノ酸に限定した。またp110ではアミノ末端側約100アミノ酸に限定した。この部分はPI3K活性に必要のない可能性が高く、p85と結合しない変異株のできる可能性を示唆している。 2.PI3Kはホスファチジルイノシトール3リン酸(PIP_3)を生じることが知られている。PIP_3を分解する酵素活性を検索した結果、5位のリン酸を特異的にはずす活性のあることを確かめた。現在、精製を続行中であるが、今までのところ、マグネシウムイオンを要求し、カルシウムイオンで阻害されることを見いだしている。
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