植物ミトコンドリアのエネルギー産生F_1ATPaseはα、β、γ、δ、δ'、εの6種のサブユニットで構成され、ミトコンドリア遺伝子に支配されるαサブユニット以外は核遺伝子に支配されている。本年度は、サツマイモの近縁2倍体野性種(Ipomoea trifida L1-2251)のゲノミツクライブラリーを作成し、サツマイモのεサブユニットcDNAをプローブとしてスクリーニングして、11個の異なるλファージクローンを同定した。cDNAの5'ー末端部と3'-末端部をプローブとしたインサートのサザンハイブリダイゼーションから、cDNAの全域をカバーするクローンを選別して、その一つλKEO7についてεサブユニット遺伝子領域の全塩基配列を決定した。その結果、この遺伝子は1498bpのイントロンに分断された2つのエキソンよりなり、第1エキソンと第2エキソンの塩基配列はそれぞれcDNAと98.6%および99.2%の相同性を示した。しかし、このクローン化された断片はεサブユニットcDNAの5'末端から上流側には53bpしか含んでおらず、転写制御領域が含まれていなかった。そこで、cDNA全領域をカバーする別のクローンλKE10のεサブユニット遺伝子の一部塩基配列を決定したところ、この遺伝子の第1エキソンはλKE07遺伝子のそれとは81.6%の相同性しか示さず少なくとも2種類の構造の異なるεサブユニット遺伝子が存在することが明らかになった。本遺伝子の全構造についても解析中である。また、先に単離していたδサブユニット遺伝子の5'上流域とGUSとの融合遺伝子を作成し、タバコに導入したが発現レベルが低く、エンエンハンサーを加えた融合遺伝子を作成する準備を進めている。
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