研究概要 |
主要な生物資源リグノセルロースは哺乳動物の分泌酵素で直接分解できないために、その可溶化利用には微生物酵素群に依存せざるを得ない。この微生物を活用してリグノセルロースの高度利用をはかることは、生物資源に蓄えられた太陽エネルギーを有効利用しようとする上で極めて重要な問題である。しかし、植物繊維成分は殿粉質成分とは異なり難分解性である。このため、植物繊維分解酵素群の特性解析や機能改良をめざしている。本年度の成果を以下に要約する。 1、セルロース分解嫌気性菌Clostridium stercorarium F-9 由来のキシラナーゼ遺伝子を大腸菌でクローニングし、全塩基配列を決定しこれをxynB.と命名した。これより推定された全アミノ酸配列には、全くCysが含まれておらず、分子量の計算値は42,000であった。この相同性解析により、本遺伝子がコードするキシラナーゼXynBはセルラーゼ活性を合わせ持つファミリーFの酵素群に属していることが判明した。XynBを大腸菌で発現させ、調製した粗酵素液をFPLCで精製し、分子量41,000(XynB-1)、および40,000(XynB-2)の2種類の単一蛋白を得た。両酵素の至適の温度およびpHはともに80℃および6付近にあることが明らかになった。 2、両酵素の耐熱性は溶液のpHが7.5に高まると著しく高まった。すなわち、両酵素を100℃、10分間加熱した後冷却後、通常の活性測定(60℃,10分)を行ったところ、pH5.5では、全く活性は検出されなかったが、pH7.5ではXynB-1は40%、XynB-2は80%の活性が回復していた。 3、断熱型示差走査熱量計を用いた分析(DSC)により、精製酵素(1mg/m1)の熱変性は85℃で起こることが判明した。DSC曲線から、本酵素には2つのドメインの存在が推定された。 以上に記したように、本研究は計画通り順調に進行し、予想以上の成果を納めている。
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