研究概要 |
愛知演習林白坂南谷尾根上において観測鉄塔が建設され,7月,10月に微気象観測,蒸散に関する樹木の生理的な特性の観測,渦相関法による顕熱の直接観測,吊木による蒸散の観測などが総合的に実施された。対象となる林分は暖帯性のヒノキと落葉広葉樹との混交林であり,ヒノキ,広葉樹各一本がサンプルとして実験に供された。今年度は降雨に伴う樹冠遮断蒸発のプロセスを明らかにするための前段階として微気象と蒸散の関連が対象地において明確にされた。これらの成果は鈴木による研究プロジェクト(科研総合A)と連携して得られたものであるが,本研究の基礎的な部分のデータはこれによって充分に入手しえたと判断される。次年度予定の単木吊下はこれらの成果の上に立って微気象学的な検討を行うために,観測法,データの分析法など共通したものも多く,その手法を蒸散観測から樹冠遮断蒸発へと振り向けることになり,経験を得た意味も大きい。一方,応用的な発展の方向として水源かん養林施業との関連を追跡していくために,流域の森林計測にとりかかっている。流域の森林の属性をリモートセンシング技術により整理する多元的分解能の流域環境解析が進行中であり,地上観測の成果を流域規模に拡大する方法として独立した2つのプロセスを接合することが有効であると判断される。
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