研究概要 |
東京大学北海道演習林内のエゾマツ天然林に健全林分と衰退林分の二つの調査地を設定し,それぞれにおいて土壌調査,微生物調査,土壌動物調査を行い,また実験土壌を使用して酸性雨が土壌動物の生息個体数に与える影響を解析した。 土壌動物のうち,ヒメフナムシの生息個体数は土壌条件ととりわけ密接な関係があり,土壌がムルの場合に比較してモルの場合の生息数は顕著に少なかった。オサムシ類については健全林分と衰退林分と出現する種の個体数に違いがあり,したがって種多様度に違いがあったが,林分の環境条件との関連を理解することはむつかしい、また1981年の風害跡地は天然更新により,あるいは人工造林によって森林の回復が進んでいたが,オサムシ類を始めとする土壌動物はきわめて貧弱であった。森林の局所的な環境条件の違いよりも,広域にわたる災害による森林環境の違いが動物には決定的な影響を与えたことが明らかになった。 酸性雨が土壌動物に与える影響について,実験的に研究を行った。均質な土壌を口径21センチメートルの植木鉢にいれ,その表面に乾燥したクヌギの落葉8グラムをのせ,0.15パーセントの硫酸水500ミリリットルを1週間に1度の割合で定期的に散水した。その結果,土壌のpHは対照区である水道水散水区に比較して9月までにおよそ1低下した。総個体数は酸性水散水区は水道水散水よりもはるかに少なかった。動物類別では,落葉の分解に関係するものとしてとくにワラジムシが酸性水散水区で少なかったが,ゴミムシ類は水道水散水区で多く,その他の動物は明瞭な傾向は認められなかった。生重では水道水散水区でゴミムシ類が多いこともあり,顕著な違いはなかった。
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