本研究は、1991年9月27日から28日にかけて佐渡島沖を通過した台風19号のもたらした同島の森林被害のなかで、特に倒木被害に関する調査研究である。被害発生以来継続して調査を続けて来たが、最終年度は特に地形の影響に焦点を当てた。平地においては、気象観測記録やスギの塩害調査などから、強風の時間的変化は台風の通過に伴う一般的な様相として理解され、特に異常な現象は見られなかったが、山地においては、低地での風の経緯を当てはめると、全く理解できない風害状況が多く見られた。地形的影響であることは明らかであるが、地形が単に乱流を発生させるだけではなく、被害を増大させる働きのあることを見いだした。地形解析を行うとともに根倒れ木の重なりの順序や中折れ木の飛び散り状況から、被害に逢い易い以下の三地形を明らかにした。 (i)深い谷があると、それに平行に沿う強風は速度を増加させ、風の道を作る。比較的平行な谷が合流する箇所では、風の流れが収斂して強風を起こす。そこに生育していた樹木が大きな被害を受ける。 (ii)周囲が開けていて、いずれの方向からも強風が吹き抜ける風衝地形が存在する。通常は尾根部を意味するが、尾根部は生育条件が悪いため高木が少なく、特定の強風によって大きな被害が発生することは少ない。高木の存在するなだらかな斜面かやや窪地に強風に晒される地形があり、そこで大きな被害が起こる。 (iii)通常の弱い風のときは山頂へ吹き抜けるが、強風になると山腹下方へ落ち込む流れになる地形が存在する。このとき下降流は垂直的な渦の一部となり全体で渦を形成する。渦流の流速は大きくなくても下降流は倒木を引き起こす可能性が高い。
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