研究概要 |
有用広葉樹のキハダ,コナラ,クスギ,などの育種と更新法について次の研究を行った。 1.キハダの育種に関する基礎的研究:キハダの開花,受粉,花粉の生産量,花粉の発芽条件,種子の形質・発芽率などについて研究し,人工交配の基礎資料を得た。次いでベルベリン含有率の高い個体の選抜をめざして,樹皮の厚さとベルベリン含有率の変異について研究した。その結果,樹皮の厚さとベルベリンの含有率は産地および個体によって著しく差異があることが認められ、選抜育種の可能性で示唆された。 2.ナラ類の変異性に関する研究:シイタケ原木の育種をめざしてカシワを主とする天然林で葉形質の変異を調べた。鋸歯形,鋸歯率などは反復率が高く,遺伝性の高い形質と考えられた。 3.コナラの人工造林に関する研究:大苗の植樹造林および直播造林について研究した。大苗の植樹造林は容易で,利点が多いことがわかった。しかし,直播造林は困難で問題点が多かった。 4.クヌギの人工造林に関する研究:苗木の種類・大きさ別植栽試験,断幹造林法および林地施肥について研究した。苗木の種類については1回床替2年生苗,苗高100〜120cm程度の苗木が活着および成長が最も良好であった。緩効性肥料のウッドエースは3年間肥効が認められた。 5.キハダ人工林の生育調査:11年生の林分で調査した。造林木の成長は斜面下部でよく,斜面上部では不良であった。成長はA層の深い所でよく,土壌の化学性よりも理学性と密接な関係が認められた。 6.コナラの天然更新に関する研究:前生稚樹の生育形および定着様式についていくつかのタイプが認められた。皆伐地における前生稚樹の定着と成長促進には除草剤の散布,施肥,刈払いの三つの処理の併用が有効であった。
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