研究概要 |
リグニン生合成の遺伝子制御を目的として、モノリグノール生合成の最後の反応を触媒するシナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)をウドから分離精製し、酵素タンパクを構成する2つのサブユニットを分離した。ついで精製CADをCNBr分解し、得られたペプチドのアミノ酸配列を決定した。これらのアミノ酸配列に基づいてオリゴヌクレオチドプローザを合成した。 このプローブを用いてcDNAライブラリーをスクリーニングして、三つのクローン、UCAD5,UCAD36,UCAD18を分離した。 1)UCAD5(約500bp)は精製CADの抗体と反応するタンパクをコードした。またUCAD5はCADをコードする配列を含み、UCAD18と36はCAD遺伝子の他の部分もコードしていることも明らかになった。さらにUCAD36(726bp)を使ってライブラリーから全鎖cDNAクローンが分離されそのヌクレオチド配列を決定することができた。 2)ウドCADのアンチセンスDNAを構築し、タバコに導入して、CAD遺伝子の発現制御を行った。得られた形質転換タバコのリグニンをチオアシドリシスすると、コニフェリルアルデヒドが対照タバコ植物に比べて多く生成し、形質転換タバコ植物のCADが制御されていることが明らかになった。 3)CADが制御されたソルガムのbrown mid-rib変異体は葉脈が赤褐色に変色することが知られていたが、コニフェリルアルデヒドをペルオキシダーゼで脱水素重合すると、赤褐色のDHPが生成し、この色が芳香環と共軛した延長共軛二重結合によることも明らかにするこができた。 4)ウドは一般の樹木ではなく、リグニンについての研究がないので、ウドリグニンのニロトベンゼン酸化、チオアシドリシス、IR^<13>C-NMR分析を行った結果、一般の被子植物リグニンと同様のグアイアシル・シリンギルリグニンから構成され、少量のp-ヒドロキシ安息香酸がエステル結合していることが明らかになった。
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