研究概要 |
本年度は平成4年度に引き続き北海道函館沿岸からマコンブ、スジメ、アナメ、青森県沿岸からマコンブ、スジメ、ワカメ、チガイソ、神奈川県沿岸からワカメ、和歌山県沿岸からアラメ、クロメ、ヒロメ、など、コンブ目植物の各種の母藻試料を採集または配偶体を譲り受け、配偶体を培養保存することができた。アナメ、マコンブ、スジメ、チガイソ、カジメ、ワカメ、ヒロメ、クロシオメについて幼胞子体を培養し、葉片を摘出し、カルスの形成、増殖および分化に及ぼす温度および光量の影響を見るための培養を行なった。 その結果、チガイソ、ワカメ、ヒロメ、クロシオメの4種では、葉片からのカルス細胞の発出は観察されたもののカルスの増殖やカルスから葉状体への分化には至らなかった。しかし、上記4種以外の9種についてはカルスの増殖または葉状体分化に最的な条件を明らかにすることができた。アナメ、マコンブはそれぞれカルスの増殖に好適な条件は10℃,10-80μmol m^<-2>s^<-1>および10-15℃,10μmol m^<-2>s^<-1>であったが、葉状体への分化は認められなかった。他の3種スジメ、カジメ、ワカメについてはカルス細胞の増殖に好適な条件はそれぞれ15℃,10-20μmol m^<-2>s^<-1>、20℃,10-20μmol m^<-2>s^<-1>、15℃,10μmol m^<-2>s^<-1>で、葉状体分化に好適な条件はそれぞれ20℃,20-80μmol m^<-2>s^<-1>、25℃,10-80μmol m^<-2>s^<-1>、10-20℃,80μmol m^<-2>s^<-1>であることが分かった。 アントクメについてはカルス細胞の形成およびカルス細胞から葉状体細胞への分化の過程を光学顕微鏡下で詳細に観察することができ、カルス細胞と葉状体細胞では色素体の大きさや配列が大きく異なることが分かった。 カルスの増殖またはカルスからの葉状体の分化に及ぼす栄養塩および植物ホルモンの影響については顕著な傾向が認められなかった。
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