研究概要 |
魚類のセロトニン代謝経路に関与するいくつかの酵素の活性分布と,それらの酵素的諸特性を明かにすると同時に,セロトニン経路の各種代謝中間体の分析法を考案した。 1.トリプトファンヒドロキシラーゼ:ラットでは脳幹の活性が高いことが知られているが,魚では脳での活性が低く,肝臓に高い活性が認められた。また活性は魚種によって著しく異なる値を示した。カツオ酵素の分子量は約29万(多量体),至適pHが80,トリプトファンに対するKmは7.9×10^<-5>Mであった。 2.芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ:カツオ酵素の分子量は約11万(2量体),至適pHが7.0付近,ヒドロキシトリプトファンに対するKmが6.97×10^<-4>Mであるが,基質特異性はかなり広いものであった。 3.モノアミンオキシダーゼ:魚類の各種臓器に2つのタイプのモノアミンオキシダーゼの存在が認められた。1つのタイプの至適pHが90,もう一方のタイプのそれは10付近で,無機イオンによる賦活あるいは阻害のパターンは明かな違いが認められた。 4.代謝中間体の分析法:逆相カラム(JASCO SIL C18S)を用いる高速液体クロマトグラフの移動相に10mM酢酸ナトリウム溶液とアセトニトリルの混合溶液を用いるが,その混合比を変えることにより,セロトニンやメラトニンを含む各種代謝中間体を精度よく迅速に分析できた。流速1ml/minとした場合,トリプタミン等の2,3の化合物(要45分)を除き,おゝむね10〜25分で分析を終了する。Ex285nm,Em345nmで2〜12ngの化合物の定量が可能であった。 今後,代謝系の研究を行う場合に,本法による分析を並行することで,酵素の動態をより詳細に把握できるものと考える。
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