本年度は本研究の最終年度に当るので、本年度までの研究成果を以下のようにとりまとめ、論文として発表した。 1.近年の農業政策を本研究の課題である農業の経済構造の近代化論に基づくものとしてとらえ、その中心をなす農産物、ことに(1)米の輸入自由化論といわゆる新農政でいう農業近代化論、ことに(2)食料管理制度の改革をとり上げ、この2つを検討した. (1)米の輸入自由化については、それが米生産の近代化をもたらすどころか、米生産の壊滅をもたらすことを明らかにした.すなわち (2)価格競争の面からみたとき、内外価格差は約1対10になっていて、コスト・ダウンの努力をすれば競争できるという範囲をはるかに超えている. (3)品質競争の面からみたとき、現状では内外に大きな格差があるが、しかし、タイ、中国、アメリカ、オーストラリアなどで日本人の食味に合う米の生産が充分可能であることから、長期的にみれば品質的な内外格差は限りなく縮小すると思われる (4)すなわち、輸入自由化は日本の米生産を壊滅させると思われる. (5)食料管理制度の改革は、農業の経済構造の近代化をもたらすどころか、農村に無用な混乱をひきおこすだけに終るだろう.すなわち (6)生産の自由化、つまり、減反を政府の責任のもとで行なうのでなければ農村に大きな混乱をひきおこす. (7)流通の自由化は農協の関与なしでは無用な混乱をひきおこす. (8)このように食料管理制度の改革は、無用な混乱のあとで、やがて生産、流通に政府が介入し、農協が影響力を発揮することになるだろう. 2.農業の経済構造の近代化を労働市場からとらえて研究した. (1)一般的な賃金決定のモデルについて均衡論的アプローチを行ない、労働市場の二重構造論に接近した (2)その上で、不均衡的アプローチを行ない、労働市場の二重構造を確認し、農業労働は非近代的な部門に属するとした
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