「課題1」視床下部生殖中枢のGnRH分泌に対する暑熱ストレスの影響評価 視床下部内側底部に埋め込んだ電極からLH分泌と同期する多ニューロン発射活動(MUA)をモニターする実験系を用い、この系の有効性確認実験および暑熱ストレスの負荷実験を行った。 1.雄ヤギ視床下部のMUAは、下垂体のLH分泌と同期し、性腺ステロイドによる抑制を受けた時にも、その同期性は不変であった。すなわち、本法により中枢のGnRH分泌リズムが解析できることが判明した。 2.次に、正常な雌ヤギの卵巣機能を抑制することが明らかなレベルの暑熱ストレスをMUA電極留置ヤギ1頭に負荷したが、明瞭なGnRH分泌リズムの低下はみとめられなかった。現在、例数を増やして実験を継続中である。 「課題2」高温による卵巣血流量の変化と卵巣機能について 超音波トランジット・タイム血流計による卵巣動脈血流量の測定技術を確立するとともに、暑熱ストレスが卵巣血流量に及ぼす影響について調べた。 1.慢性埋め込み型プローブを脈管円錐部の卵巣動脈に取り付けることにより、卵巣機能を損なうことなく血流量の計測が可能であった。 2.性周期における卵巣血流量は黄体期に著しく増大し、卵胞期には低いレベルで推移した。この時、暑熱ストレスは、予想に反して、黄体期の血流量を増加させる傾向を示し、卵胞期においては暑熱ストレスによる明らかな変動は認められなかった。現在、例数を増やして実験を継続中である。 「課題3」水牛の耐暑性について 水浴という独特の習性により熱帯に適応している水牛の耐暑機構について環境生理学的な解明を試みた。その結果、暑熱ストレスを受けた水牛では、全循環血液量および体表面血液量が増加し、体表からの顕熱放散が促進されることが明らかになった。
|