研究概要 |
くぬぎ林間放牧地(放牧開始後7年経過)の気温と地温、日射量などの自然環境の把握,放牧牛による食草行動,およびくぬぎ林間放牧地の浸食土砂量について近接するくぬぎ林地および人工草地と比較検討した。 くぬぎ林間放牧地内は,きぬぎ林外と比較して気温および地温の日較差の低い日が多く,また気温および地温の時間変動が小さく,温度環境に関して穏やかな傾向が認められた。くぬぎ林間放牧地内の1992年8-11月の日射は,くぬぎ林外の42.2-72.2%(平均54.2%)であった。 くぬぎ林間放牧地に出現した植物種68種に対する放牧牛のし好性は,アオスゲ,ヒゴグサ,ススキ,イチゴツナギおよびトボシガラで高かった。 クヌギ林間放牧地の比土砂量(単位面積当たりの浸食土砂量)は,クヌギ林地よりもわずかに少なく,極めて微量であったが,降雨量の増加に伴う比土砂量の増加率は,クヌギ林地に比べてわずかに高い値を示した。このことから,繁殖肉用牛のくぬぎ林地への放牧は,7年経過したのに伴って土壌浸食にいくらかの影響を及ぼしていると考えられた。 人工草地の比土砂は,くぬぎ林地およびくぬぎ林間放牧地に比べて著しく多かった。 各期間の比土砂量と合計降雨量との間には,いずれの場所でも有意な相関関係がみられたが,特に人工草地において高い相関係数が得られた。 くぬぎ林地,くぬぎ林間放牧地と人工草地の比土砂量の違いは,冬期における裸地の凍結融解による土壌の集積と雨水の表面流出量の違いから生じると考えられた。
|