研究概要 |
くぬぎ林間放牧地は、林外に比べて気温の日較差の小さい日が多く、温和な条件にあると推定された。樹齢10年のスギ林地の相対日射量(全日射に対する対象地の日射量の比)は、年間を通じて10%前後で推移したのに対して、樹齢および栽植密度が同様の条件にあるくぬぎ林地の相対日射量は約20-80%で推移し、林間への光透過が良好であった。 放牧開始より5年が経過した林間放牧地の植生は、放牧当初に優占していたススキ,スイカズラが衰退し、イチゴツナギとアオスゲが優占する植生へと変化したが、これらの植物種は家畜による採食性が高く、植物種構成の面から家畜生産力が顕著に低下しているようにはみられなかった。ただし、放牧利用に伴って、大量に摂取すると家畜に生理障害を起こすワラビや採食性の劣るヘクソカズラ侵入がみられることは、今後の植生管理上留意する必要がある。 現在の半自然状態の植生下におけるくぬぎ林間放牧地への放牧可能頭数は成牛1頭/1ha程度で、放牧期間も5月下旬より11月中旬までの約6カ月間である。放牧頭数増加と放牧期間の延長のため、牧草導入の効果を検討した。オーチャードグラスやレッドトップなどの牧草種を導入した区は、特に4月における草生産量を高める効果が認められ、牧草導入によって春の放牧開始時期を早めることが可能と考えられた。導入牧草種のなかで、レッドトップは定着が良好で、しかも収量が高かった。また、レッドトップはほふく型であるため、ほかの導入した草種に比べて比較的速く地表面を被覆する効果が高く、林間放牧地への導入草種として有望と考えられた。
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