研究概要 |
本研究は,クヌギ林間放牧地における家畜生産と水および土壌保全との関係について明らかにする目的で,土壌物理性,透水性および土壌侵食量について放牧を行ったことのないクヌギ林地,放牧利用年数の異なるクヌギ林間放牧地および人工草地と比較・検討した。 クヌギ林間放牧地では,クヌギ林地よも表面土壌が緊密化し,浸透能および透水性が低下しており,表面流出水量および土壌侵食量は,クヌギ林地よりも高かったが,その量は極めて小さかった。このことから,クヌギの枝・葉による降雨の遮断および毎年一定量維持されると推察される下層植生の生長が降雨後発生する表面流出を抑制し,かつ土壌侵食を抑制すると考えられた。 しかし,放牧強度が高く,休閑期間を含まずに家畜の放牧を行ったクヌギ林間放牧地では,短期間で土壌の緊密化,浸透能および透水性が低下することが認められた。このことは,放牧条件によってクヌギ林間放牧地でも水および土壌保全機能に影響をおよぼし,土壌侵食を増大する可能性があると考えられた。 以上のことからクヌギ林間放牧地は表面流出や土壌侵食を抑制する能力が人工造成草地に比べて極めて高く,草生産力も極めて高い放牧地であると考えられた。しかし,放牧強度や休閑期間などの適切な管理を怠った場合,クヌギ林間放牧地でも水および土壌保全機能が低下し,土壌侵食の増大が予想されるため,適切な放牧管理,下層植生の管理が必要と推察される。
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