平成4年度と平成5年度に調査採血した犬種は、三河犬、西シベリアのライカ、中央アジアおよびコーカサスのオフチャルカ(シープドッグ)、および北サハリン在来犬である。いずれも採血した血液を血漿と赤血球に分離し、主として電気泳動法により蛋白質多型を検出した。その多型を支配する遺伝子頻度を求め、16座位上の遺伝子頻度の差から、主成分分析により、犬種間の関係を調べた。 ヘモグロビンA(Hb^A)遺伝子は日本犬を含む東北アジアの犬種に特有に存在する遺伝子である。三河犬、北サハリン在来犬にいずれも高い頻度で見出されたが、ライカやオフチャルカには見出されなかった。 ガングリオシドモノオキシゲナーゼg(Gmog)も同じく、日本犬を含む東北アジアの犬種に特有の遺伝子であるが、北サハリン在来犬にかなり高い頻度で見出され、三河犬にも見出されたが、ライカやオフチャルカには見出されなかった。これら2つの遺伝子の他、多型を示す16座位上の遺伝子頻度から主成分分析をした所、北サハリン在来犬は、地理的に近い日本犬である北海道犬とは遠く、韓国在来犬である済州島犬と近い関係にあることがわかった。三河犬も韓国の済州島犬と近い関係にあり、この犬種に朝鮮半島を経た遺伝子の流入があったことがわかった。ライカ、オフチャルカは、遺伝的に日本犬とヨーロッパ犬種の中間に位した。今までに得られたデータから、日本犬中、南端の琉球犬と北端の北海道犬は南方由来の古いイヌであるのに対し、他の日本犬種は、このイヌと朝鮮半島由来のイヌの混血によって成立したと推定された。 RAPD法により、DNA多型を調べた所、日本鶏のうち、チャボの内種の多くと小国は同じクラスターに入ったが、白笹チャボ、ゴイシチャボは東天紅、尾長鶏、唐丸(蜀鶏)、小シャモと共に別のクラスターに属することがわかった。日本鶏の相互関係は引続き調査中である。
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