研究概要 |
我々は韓国で発生した兎の出血病(RHD)例の肝乳剤を出発材料として,新しく分離したカリキウイルスの性状,宿主細胞内の増殖過程,病原性を検索した。精製ウイルス粒子は,肝乳剤を超遠心およびCsCl密度勾配遠心することによって得られた。 ウイルス粒子は正20面体構造を示し,直径は35〜40nmであった。ウイルス粒子はコアとスパイク様構造を持ったカプシド構成され,構成蛋白の分子量は63kDaであった。 本ウイルスの病原性は極めて強く,成兎に接種すると20時間から96時間の間に致死させ,急性壊死性肝炎を引き起こした。また,死亡した兎の全身に充・出血と播種性血管内凝固(DIC)が形成されていた。 本ウイルスを感染させた兎の肝には,電顕的にウイルス粒子が証明された。ウイルス粒子は,細胞菌に多発性に形成された単位膜に囲れた嚢胞,空胞および小空胞内に認められた。またウイルス粒子は,細胞基質にも孤在したり,嚢胞膜と空胞膜との間に線状に配列していた。一部のウイルス粒子は結晶状配列を示していた。 RHDを耐過した兎から得たビチオン化抗RHDウイルスIgG抗体を用い,ABC直接法による免疫染色を行った。この結果,RHDウイルスに特異的抗原を肝細胞細胞質に検出し得た。このウイルス抗原は,肝細胞の変性・壊死に一致して出現していた。 RHDの発詳の地である中国からもウイルス材料を入手し,上記と同様の検索を行った。その結果,ウイルスの諸性状ならびに病原性は,韓国由来の株と全く同一であった。 以上の成績から,世界に流行したRHDの原因はカリキウイルスと断定され,その特徴病変は急性壊死性肝炎とDICであることが明らかにされた。よって本病は,カリキウイルス性肝炎と呼称すべきである。
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