研究課題/領域番号 |
04454116
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小野寺 節 東京大学, 農学部, 教授 (90012781)
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研究分担者 |
湯川 真嘉 日本大学, 農獣医学部, 助教授 (50107249)
松本 芳嗣 東京大学, 農学部, 助教授 (00173922)
小野 憲一郎 東京大学, 農学部, 教授 (50111480)
土井 邦雄 東京大学, 農学部, 教授 (70155612)
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キーワード | ウイルス / 自己免疫病 / 若年性糖尿病 / I型糖尿病 / FTS / 豚 / 胸腺ホルモン / マウス |
研究概要 |
本年は血清胸腺因子(FTS)による慢性感染症に対する抵抗性の増強について検討した。マウスに対するウイルス感染としてはオーエスキー病ウイルス(PRV)を、細菌感染としてはレプトスピラ(L)菌を、原虫感染としてはSCIDマウスに対するPneumocystis carinii(PS)を用いた。FTSは、マウスに投与された後にNK活性を高めることが知られているが、PRVやL菌感染後も同様にNK活性を上昇させることが明らかにされた。しかし、活性酸素検出法によるマクロファージ活性には、感染マウス、非感染マウスとも変化が見られなかった。BALB/cマウスにFTS10μgを全投与後に、PRV10^5PFUを感染させると、投与マウスでは60%の生残数を見たが、非投与マウスでは感染4日後までに全例死亡した。FTSにより獲得された抵抗性をさらに解析するために、血中抗体価およびインターフェロン活性を測定した。抗体価においては、投与群・非投与群間に差が見られなかったが、インターフェロン産生においてはFTS投与群が有意に高い値を示した。しかしながら、血清をpH2.0で処理したものについては、投与群・非投与群間に差が見られなかった為、FTS投与により、γインターフェロン産生が亢進したことが明らかにされた。従って、FTSはPRV感染後、NK活性およびγインターフェロン産生の亢進を介してマウスに抵抗性を高めるのが明らかにされた。 同様の実験をL菌感染マウスに対して行ったところ、FTSはNK活性の亢進とともにマウス死亡率を低下させた。従ってFTSはL菌感染においても抗病性を高めるのが明らかにされた。また、SCIDマウスを用いたPS感染においてもFTSはマウス抗病性を高めることが明らかにされた。 以上の様に、FTSは病原体感染の後に、γインターフェロン産生を増強させることから、インターフェロン治療のエンハンサーとして用いられる可能性、オーエスキー病ワクチンのアジバントとして用いられる可能性、レプトスピラ病の治療薬として用いられる可能性、さらにAIDSにおいて併発するカリニ肺炎における治療薬として用いられる可能性が示された。
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