動物の造血器腫瘍における癌遺伝子と癌抑制遺伝子の異常

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04454121
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 辻本 元 東京大学, 農学部, 助教授 (60163804)
• 研究分担者: 小野 憲一郎 東京大学, 農学部, 教授 (50111480) ; 亘 敏広 東京大学, 農学部, 助手 (50220950) ; 後飯塚 僚 東京大学, 農学部, 助手 (60205581) ; 長谷川 篤彦 東京大学, 農学部, 教授 (90011923)
• キーワード: 造血器腫瘍 / 白血病 / リンパ腫 / イヌ / ネコ / 癌遺伝子 / 癌抑制遺伝子

研究概要

造血器腫瘍発症の分子機構を解明するため、イヌやネコなどの動物に自然発生する造血器腫瘍における癌遺対子および癌抑制遺伝子の異常を解析した。
イヌおよびネコの造血器腫瘍について核内遺伝子群の癌遺伝子の異常を検討した結果、数例においてmycおよびmyb遺伝子の再構成が認められ、現在その再構成の機構を検討している。
癌抑制遺伝子については、ネコのp53遺伝子のcDNAクローニングに成功し、その塩基配列を決定した。ネコのp53遺伝子のアミノ酸配列はヒトと82.9%、マウスと75.6%、ラットと76.5%、ニワトリと57.2%のホモロジーを示した。また、SV40のラージT抗原と結合する領域、動物種間で良く保存されている領域、および核移行シグナルのアミノ酸配列はネコのp53遺伝子においても良く保存されていた。さらにPCR-SSCP法によってネコの造血器腫瘍におけるp53遺伝子の変異の検出を試みたところ、正常p53遺伝子の発現がなく、変異p53遺伝子の発現が増強している症例が見い出され、数例においてはその変異部位を同定することができた。
また、ネコのT細胞リンパ腫9例についてFeLVの共通組み込み領域の検索を行った結果、4例(44%)において8kbの限定された領域にFeLVが共通に組み込まれていることが解った。この共通組み込み領域はネコのB2染色体上にあり、その染色体上に存在するmybおよびpim-1とは異なり、また既知のFeLV共通組み込み領域flvi-1およびflvi-2とも相同性を示さなかった。したがって我々が見い出した共通組み込み領域はT細胞リンパ腫における新しい癌関連遺伝子をcodeしている可能性があり、現在その解析を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Yang,M.,Goitsuka,R.,Tsujimoto,H.and Hasegawa,A.: "Proliferative response of a bovine leukemia virusinfected lymphoblastoid B-cell by its culture supernatant and cytokines." J.Vet.Med.Sci.54. 255-259 (1992)
• [文献書誌] Yang,M.,Goitsuka,R.,Tsujimoto,H.,Onuma,M.and Hasegawa,A.: "Association of tumor-associated antigen on the proliferation of bovine leukemia virus-infected B-cell lines." J.Vet.Med.Sci.54. 757-761 (1992)
• [文献書誌] Ohno,K.,Watari,T.,Goitsuka,R.,Tsujimoto,H.and Hasegawa,A.: "Altered surface antigen expression on peripheral blood mononuclear cells in cats infected with feline immunodeficiency virus." J.Vet.Med.Sci. 54. 517-522 (1992)
• [文献書誌] Ohashi,T.,Goitsuka,R.Watari,T.,Tsujimoto,H.and Hasegawa,A.: "Elevation of feline interleuken 6-like activity in feline immunodenficiecy virus infection." Clin.Immunol.Immunopathol.65. 207-211 (1992)
• [文献書誌] Matsumoto,Y.,Momoi,Y.Watari,T.,Goitsuka,R.Tsujimoto,H.and Hasegawa,A.: "Detection of enhancer repeats in the long terminal repeats of feline leukemia viruses from cats with various neoplastic and non-neoplastic diseases." Virology. 189. 745-749 (1992)
• [文献書誌] Momoi,Y.,Matsumoto,Y.Watari,T.,Goitsuka,R.Miyazawa,T.,Mikami,T.,Tsujimoto,H.and Hasegawa,A.: "Detection of feline immunodeficiency virus proviral DNA in feline peripheral blood mononuclear cells by nested two-step polymerase chain reaction" Zentralblatt fur Bacteriologie. (1993)