研究概要 |
1,4,5-イノシトール3燐酸受容体(以下IP_3-R)およびライアノジン受容体(以下Rya-R)はCa^<2+>-チャネルを形成し、細胞内情報伝達過程の重要な要素である。これら2種類の受容体は膜蛋白質としては非常に大きな分子量をもつにもかかわらず両者とも既にそのアミノ酸配列が定決されたが、組織学的観点からは、細胞内におけるそれぞれの受容体の局在の検索が筋肉および小脳プルキンエ細胞でなされてはいるものの、立体的な分布に関する情報は皆無である。また、その分子構造に関しては、Rya-Rではネガティブ染色像あるいはクライオ電子顕微鏡像から3次元再構成像が得られているがIP_3)Rではようやくネガティブ染色像が得られてはいるものの、像質は極めて貧弱で、詳細な微細構造の解析に用いるには程遠い。急速凍結フリーズエッチ・レプリカ法は生体高分子構築物の動きを一瞬のうちに止め、それらの表面構造を高い空間分解能で捉えることができ、組織・細胞内の蛋白質分子をも標的にできる。筆者はこれまで、当方法により、構造物の3次元表面構造が良く保存され、ほぼ1nmほどの構造が識別できることなどを実際に示すとともにさらに広範囲の応用を求め、様々な試料を観察してきた。本研究においては、急速凍結フリーズ・レプリカ法のそのような特長を大いに活用して研究を進めた。2種の受容体の静的な分子構造を比較しその結果、その類似点と相違点が明らかになった。特にそれらの受容体分子の物理的なサイズの違いは、分子量の比からは全く予想できないほど大きく、特筆すべきものであった。さらに、酸欠状態のの小脳においては、プルキンエ細胞内のIP_3Rが特徴的な、そして非常に整った2次元結晶を形成していることが判明した。今後は、受容体蛋白質の詳細な立体構造およびリガンド結合によるその変化を追求するとともに、受容体の結晶形成の生理的メカニズム、そしてその機能的意義に関して更に研究を進める。
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