研究概要 |
1)マウス小脳より精製されたイノシトール1,4,5-3燐酸レセプター(IP3R)に対するモノクローナル抗体を用いて、免疫細胞化学的および免疫化学的にIP3Rの細胞内微細局在について検討した。モノクローナル抗体の内の一つ(4C11)は、成熟マウスの血管内皮細胞、平滑筋細胞、表皮角化細胞において、IP3RあるいはIP3Rに極めて類似した240kDの蛋白質と反応した。また、凍結超薄切片上のコロイド金による標識は、平滑筋細胞を除いて細胞内のオルガネラには認められず、細胞膜の小陥凹であるカベオラ(caveola)に集中して観察された。 2)培養血管内皮細胞を膜不透過性のビオチン化試薬で処理したのち、膜蛋白質を可溶化して固定化ストレプトアビジンで回収すると、240kD蛋白質は回収画分、すなわちビオチン修飾を受けた画分に見出された。これにより、240kD蛋白質が細胞表面に露出していることが証明された。 3)培養マウス角化細胞株(PAM212)およびウシ大動脈内皮細胞においては、240kD蛋白質はアクチン線維の一部に沿って分布することが認められた。 4)細胞膜カルシウムポンプ(カルシウムATPase)に対するポリクローナル抗体を作成し、細胞内微細局在について検討した。その結果、血管内皮細胞、平滑筋細胞含む種々のマウス細胞において、細胞膜カルシウムポンプがカベオラに局在することが明らかになった。 5)240kD蛋白質の機能は現段階では不明であるが、IP3Rとの類似性から考えて、カルシウム流入に関与している可能性がある。今回の研究結果は、カベオラが細胞膜を介したカルシウムの出入を司るオルガネラであることを強く示唆する。
|