研究概要 |
末梢神経の有髄線維の再生芽は損傷部中枢側近傍のランヴィエ絞輪から出る。絞輪部の軸索形質膜には電子密度の高い裏打ち構造があるが、再生芽が形成される部位では裏打ち構造が消失し、小胞が集まることが特徴である。再生芽はシュワン細胞の基底膜の内側面に沿って伸びる。本研究では1.再生芽の形成機序と,2.再生芽伸長の機能的ドメイン特に膜成分の付加機構、の2つのテーマで研究を進めている。 まず、再生芽の形成機序については、経時的に調べることによって、損傷後3時間で発芽の開始と考えられる所見があった。これについては論文(1)で発表した。また、発芽開始の誘因のひとつとしてCa^<2+>濃度の上昇が考えられるがカルシウムイオノフォアであるA_<23187>を含むリンゲル液で潅流した神経の絞輪部での変化を調べている。 次に、再生芽の伸長に関与すると考えられる小胞と表面形質膜との融合機構については、シナプトフィジンとシナプシンIの免疫組織化によって、両者とも形質膜と小胞表面、および細胞質の一部に局在していることを確かめた。 プロテインキナーゼCの免疫組織化学では、成長円錐の表面形質膜下から細胞質にかけてび漫性に陽性反応が示された。 一方、再生軸索特に成長円錐がシュワン細胞表面に沿って伸びる際に働く接着物質の候補のひとつであるN-カドヘリンが、免疫組織化学的に再生芽に局在していることが確かめられた。またカドヘリンと細胞骨格成分との結合因子であるカテニンの局在をやはり免疫組織化学的に検索している。 これとは別に、プロテインキナーゼCの局在を正常末梢神経で調べた。脊髄神経節、神経線維、運動終末および筋紡錘とパチニ小体の知覚終末に、α,β,γのサブタイプが局在していることを明らかにした。これらの一部は論文として発表した(2,3,4)。
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