研究概要 |
ニワトリ視蓋原基では孵卵2日目より、ホメオボックス遺伝子の一つengrailed(en)が、尾側に強く,吻側に弱いという匂配をもって発現される。我々の一連の研究により,enの発現がその後の視蓋の極性を決めるのに関係していることが示唆されている。 中脳間脳境界部あたりにはenの発現を抑える因子の存在が示唆されたので,中脳間脳境界部にシリコンのバリアーを挿入してみた。バリアーを挿入した視蓋原基では全体にわたってenの発現が見られた。しかしこのような視蓋への細胞線維の投射を見ることは,バリアーが存在するため困難であった。 孵卵2日目胚の中脳(視蓋原基)を間脳部に移植すると,移植片は異所的視蓋として分化し,enの発現パターンはもともとの運命とは逆転した。ホストを3日目胚,移植片を2日目中脳にすると,enの発現パターンの逆転はおこらず,もともとの発現パターンを示した。いづれの場合も,移植片でのenの発現パターンと網膜視蓋投射パターンは強い相関を示した。我々のこれまでの結果によると視蓋の吻尾軸は孵卵3日目に決定されるが,これは中脳間脳境界部でのenの発現をおさえる因子が消失したためであろうと推定できる。 本研究は視蓋吻的尾軸の決定におけるen遺伝子の役割が大きいことをさらに印象づけた。今後はenがどのように発現を制御されているか,またenは転写因子をコードにしているので,enによってどの遺伝子が制御されているのか,分子生物学的手法で追求していきたい。
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