(1)ホヤ2細胞系を用い、ギャップ結合の変化を調べたところ、表皮型に分化して急激に増加する場合も、神経型に誘導された場合に消失する過程もともに転写活性依存性であり、Actinomycin Dなどで分化を抑制すると、襄胚中期までに増加したギャップ結合はそのまま変化しなくなることが分かった。また表皮型に分化した場合に急激に増加するギャップ結合は初期の胚細胞にみられるものの電圧依存性に差があり、表皮分化に特有のものではないかと考えられた。 (2)神経系に誘導された場合に特長的なギャップ結合の消失は主として、分化する予定神経割球の側に原因があること、及びリン酸化酵素阻害剤K252aで薬量依存性に消失の時間的遅延が起こり、それにともなって神経分化に特有のNaチャネルとKチャネルの発現も遅延することが分かった。 (3)ホヤ8細胞胚より単離した動物半球頭側割球を用いて、bFGFの作用を調べたところ、10ng/mlから100ng/mlの範囲で神経誘導作用があることが分かった。また、その誘導作用は時間依存性および異常整流性Kチャネルの変化などの点でスブチリシンおよび細胞接着によるものと全く同様で、おそらく同一の受容体を介するものではないかと考えられた。 (4)分化にともない急激に増加あるいは消失するギャップ結合はマーカーとして有用であると考え、カエル胚のギャップ結合のクローンとの相同性を予想してPCR法で検索したが今のところクローンは得られていない。 (5)神経誘導因子受容体として受容体型チロシンキナーゼとくにFGF受容体の可能が高いので、卵細胞mRNAのcDNAよりチロシンキナーゼの共通配列を利用してPCR法によりクローニングを行った。現在数種類の受容体型チロシンキナーゼのクローンを得ている。
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