研究概要 |
(1)ホヤ8細胞胚より単離した動物半球頭側割球を用いて、bFGFの作用をNa^+チャネルの発現を指標として調べたところ、10ng/mlから100ng/mlの範囲で神経誘導作用があることが分かった。また、その誘導作用は時間依存性およびチャネルの変化などの点で、スブチリシンおよび細胞接着によるものと全く同様で、おそらく同一の受容体を介すると考えられた。そこで受容体を探索する目的で、マボヤ未受精卵および110細胞胚cDNAよりチロシンキナーゼの共通配列によるPCR法を用いクローニングを行った。その結果、既に得られたキナーゼと相同性を有する12種のクローン(pTK1-pTK12)を得た。最も哺乳類等のFGF受容体と相同性が高いのpTK6,pTK7,pTK9,pTK11であった。 (2)ホヤ2細胞系における相互のギャップ結合は表皮型に分化する場合に急激に増加し、神経型に誘導された場合に消失することが分かった。神経誘導された場合の消失は主として、分化した神経型割球の側に原因があること、及びキナーゼ阻害剤K252aはそのギャップ結合消失を抑制することが分った。しかし、K252aは同時にNa・Kチャネルの発現も遅らせる。そこで、接着により神経誘導を受けた割球を単離し20-25時間に0.5μM K252a与えて培養したところ、通常通りの時間にチャネルが発現した。既ち、K252aはギャップ結合の消失過程を特異的に阻害する事により神経分化の機能発現を遅延することが示された。ギャップ結合消失は神経誘導の結果としての燐酸化によるが、これがさらに神経形質発現の時間制御を行っていることが示唆された。 (3)ホヤ正常胚のin situ hybridizationでニューロン特異的に発現するNa^+チャネル遺伝子TuNaIは、分裂抑制胚においてもmRNAの発現が確かめられた。更に、神経誘導2細胞系で培養した場合にも認められ、細胞接着による遺伝子の転写誘導が確められた。
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