研究概要 |
1)Cyclic GMP/Cyclic GMP dependent protein kinase (G-kinase)によるリン酸化の主要な基質の1つであり、細胞膜Ca^<2+> pump ATPase(SDS-PAGE上分子量135及び145 kDaの2つのバンドとして存在)そのものと考えられていたタンパク質が、実は、細胞膜Ca^<2+> pump ATPaseとは全く別の、分子量138 kDaのタンパク質であり、細胞膜Ca^<2+> pump ATPase自体は、cyclic GMP/G-kinaseによってリン酸化されぬ事を明らかにすると共に、cyclic GMP/G-kinaseによる血管細胞膜Ca^<2+> pump ATPaseの活性化には、SDS-PAGE上の分子量240 kDaのもう一つ別のタンパク質のリン酸化が関与する事を明らかにした。 2)上の分子量240kDaのタンパク質の性質について、検討を加え、calmodulin非結合性で、glycocalyxを持ち(concanavallin A、limulus polyphaemus agglutinin等に結合する)、イノシトール-1,4,5-3リン酸(IP_3)を特異的に結合する蛋白で、kd=10.8nMの高親和性結合部位(Bmax=138 pmol/mg)と、kd=187 nMの低親和性結合部位(Bmax=1240 pmol/mg)を持つ事を明らかにした。IP_3の結合は50μg/mlのヘパリンで完全に抑制される。 3)以上の成績から、我々の240 kDaタンパク質は、IP_3受容体である可能性が濃厚になってきたので、ヘパリン、lentil lectin、concanavallin Aを用いたaffinity chromatographyの組み合わせにより、calmodulin affinityカラムからの1M NaC1溶出液に含まれるこの蛋白の更なる精製を試み、1M NaC1溶出液に共存する他の蛋白を殆ど含まぬ状態まで精製する事に成功した。これまで知られているIP_3受容体は、同時にイオンチャネルであるので、現在、この精製240 kDaタンパク質を、リン脂質膜に組み込み如何なるイオンチャネルが存在するか等について検討中である。又、その細胞内局在を明らかにする事等を目標に、精製タンパク質を用い抗体の生産も試みている。
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