研究概要 |
cGMP依存性タンパクリン酸化酵素(G-kinase)の基質であり、そのリン酸化とG-kinaseによる細胞膜Ca^<2+>-pumpの活性化との間に良い相関が認められるタンパクとしてブタ大動脈平滑筋から我々が見つけだした、分子量240 kDaのタンパクは、その後の研究で、calmodulin、concanavalin A、heparinに結合性を持つ事がわかり、Triton X-100で可溶化後、3段階(calmodulin、concanavalin A、heparin)のaffinity chromatographyにより、SDS-PAGE上、殆ど単一のバンドと見られるレベルまで精製できる事がわかったので、精製タンパクについて予備的なアミノ酸分析を行った所、同じくheparin結合性で、分子量も良く似た糖タンパクであるラット及びマウス小脳のinositol 1,4,5-trisphosphate(IP_3)受容体と、21個のアミノ酸配列が完全に一致する断片が見出された。そこで、IP_3結合性について検討を行った所、IP_3を単一部位に高い親和性で結合する事(IP_3の親和性は、IP_3の約1/60)、結合の比活性は精製につれ上昇する事、結合はIP_3受容体の桔抗薬であるheparinで完全に抑制される事、等が明かとなった。蔗精密度勾配遠心分離を行っても、IP_3結合活性は、240 kDaタンパクと常に行動を共にするので、240 kDaタンパク自身の性質である事は間違いない。又、240 kDaタンパクの沈降位置は、小脳から精製したIP_3受容体のそれとほぼ同じであるし、240 kDa蛋白質に比べると明らかに弱いが、小脳IP_3受容体もG-kinaseによってリン酸化される。しかしながら、240 kDaタンパクと小脳IP_3受容体とは、calmodulin結合性に違いがあるし(小脳IP_3受容体はcalmodulin非結合性)、予備的検討で、免疫学的にも両者の間には多少違いのある事がわかっており、240 kDaタンパクは、IP_3受容体ファミリーの一員であると考えられる。今后は、チャネル活性の有無等について検討を加えると共に、240 kDaタンパクによる細胞膜Ca_<2+>-pumpの活性化について更に詳しい検討を加えて行きたい。
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