研究概要 |
腸管に存在する生理活性物質のγ-アミノ酪酸(GABA)と血管作動性腸管収縮物質(vasoactive intestinal contractor,VIC)の作用およびその受容体の性質を解析した。1.GABAはモルモット摘出腸管標本において、初めにGABA_A受容体を介して一過性の収縮を起こした後、GABA_B受容体を介して弛緩を引き起こす。GABA_B受容体を介した弛緩作用はアセチルコリン(ACh)遊離の抑制による。そこで、GABA_B受容体の性質を調べるために、ラットの脳および腸管からメッセンジャ-RNA(mRNA)を抽出し、それをアフリカツメガエル卵に移入した。その結果、卵にGABA_B受容体を発現することに成功した。この発現したGABA_B受容体はGABAにより活性化されると、百日咳毒素感受性GTP結合蛋白質を介してK^+チャネルが開口し、細胞膜の過分極を引き起した。GABA_B受容体を介する反応はプロテインキナーゼCやcAMP依存性フロテインキナーゼにより脱感作を起こすことが明らかになった。2.VICは強力な血管収縮物質であるエンドセリン(ET)の一種であるが、そのmRNAの発現は、現在腸管でのみ証明されているペプチドである。モルモット摘出腸管にVICを適用すると、腸管は一過性の弛緩の後にアトロピン感受性、テトロドトキシン感受性の収縮を起こした。VICはこの腸管からACh遊離を惹起したことから、VICの収縮作用には腸管平滑筋細胞への直接作用に加えて、コリン作動性神経を介した作用も関わっていることが明らかになった。アフリカツメガエル卵へのmRNAの移入により、その卵でのVICに反応する(Ca イオン依存性Clイオンチャンネルとの共役)受容体の発現に成功した。この受容体はET(ET-1,ET-2,ET-3)には反応しなかったので、VICに対する特異的な受容体である。現在、この遺伝子移入再構成系を用いて更に、VIC受容体の性質、細胞内伝達系を解析している。
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