研究概要 |
腸管に存在する生理活性物質の血管作動性腸管収縮物質(vasoactive intestinal contractor,VIC)は強力な血管収縮物質であるエンドセリン(ET)の一種で、そのメッセンジャーRNA(mRNA)発現が腸管でのみ証明されているペプチドである。本研究はVIC、受容体の局在、性質を解析したものである。モルモット摘出腸管にVICを適用すると、腸管はET類(ET-1,ET-2,ET-3)と同様に、一過性の弛緩の後に収縮を起こした。この収縮はVICの腸管平滑筋細胞への直接作用とコリン作動性神経への作用とによっていることが明らかになった。VICの平滑筋直接収縮作用はET類の脱感作後に発現しなくなったが、ACh遊離促進作用はET類の脱感作後にも発現したことからコリン作動性神経上にあるVIC受容体はET受容体(ET_A,ET_B)とは異なる、VICに特異的な受容体であると考えられた。次にラット腸管から抽出したmRNAをアフリカツメガエル卵母細胞に移入することによって、その卵母細胞においてET類には反応せずVICにのみ反応する受容体の発現に成功した。膜電位を固定したmRNA移入卵母細胞においてVICは内向き電流を発生し、この電流は細胞内のCa^<2+>をキレートすることによって消失し、また、Cl^-平衡電位に膜電位を固定すると発生しなくなったことから、Ca^<2+>によって活性化されるCl^-電流であることが明らかになった。次にmRNA移入卵母細胞を百日咳毒素で処理すると、VICに対する反応が発現しなくなったことから、VIC受容体は百日咳毒素感受性のGTP結合蛋白質と共役したものである。VICの反応はVICを洗浄後短時間でVIC適用を数回繰返すと脱感作を起こすが、プロテインキナーゼC(PKC)の抑制薬を前処置すると、その脱感作が減少したことから、VIC受容体にはPKCで燐酸化されて機能が減弱する部位が存在するものと考えられる。
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