ガングリオシド誘導体を合成し、これを糖鎖プローブとして、白血病細胞の分化・増殖の制御に関わるガングリオシド結合蛋白質を標識・同定し、その機序を探るとともに、結合蛋白質としての糖脂質合成酵素や糖鎖受容体を親和標識することによって特定することを目的とし、以下の結果を得た。 1.ヒト白血病細胞HL-60細胞に12-O-tetradecanoylphorbol 13-acetate(TPA)を添加すると、GM3プローブによって特異的に標識される分子量40K、等電点5.2-5.3の蛋白質が誘導されてきた。この蛋白質は、TPAの濃度が5×10^<-9>M以上の濃度で誘導され、TPA処理後、1-2時間で一過性に、24時間以降は調べた限り4日目まで定常的に発現していた。この40K蛋白質は可溶性画分に回収された。 2.ヒト急性単球性白血病細胞THP-1細胞でも、GM3親和性40K蛋白質の誘導が認められた。この蛋白質はHL-60細胞よりTHP-1細胞で安定して発現していた。さらに、TPAによって誘導される分化形質のうち、40K蛋白質は細胞の基質接着性に関与することが示された。無血清培地で継代培養したTHP-1細胞の可溶性画分より、CM3アフィニティークロマトグラフィーでGM3親和性40K蛋白質を精製した。 3.ラット肝から1万倍以上に高度に部分精製したGM1合成酵素をGM2プローブで光親和標識したところ、分子量40K、等電点4.5同酵素が特定された。 4.リン酸化マンナンプローブによってラット肝のMan6P/IGF-II受容体が光親和標識された。IGF-IIはリン酸マンナンによるMan6P/IGF-II受容体の光親和標識を阻害しなかったことから、Man6Pを認識する部位とIGF-IIを認識する部位が異なることが確かめられた。
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