ジグリセリドキナーゼに関する生化学的,遺伝子工学的検討

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04454158
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 加納 英雄 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70045475)
• 研究分担者: 今井 伸一 札幌医科大学, 医学部, 助手 (20213209) ; 坂根 郁夫 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10183815) ; 山田 恵子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80045541)
• キーワード: ジアシルグソセロールキナーゼ / ホスファチジン酸ホスファターゼ / シグナル伝達 / 遺伝子工学 / EFハンド / 亜鉛フィンガー

研究概要

1。研究終了課題ー(1)ヒトDGK遺伝子解析。22kbのgenomic cloneを単離し、転写開始点決定、5'ーflanking regionの解析を行なった。(投稿中)。この遺伝子はその細胞特異的発現にも関わらず、housekeeping geneであった。ただし転写開始点にinitiator element配列と、1か所のGC boxをもつ。CAT assayで基本的なプロモーター活性が検出されたが、この遺伝子の細胞特異的発現機序を説明できるcisーelementは同定出来なかった。(2)ホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)の精製。ブタ胸腺膜分画より分子サイズ83kDaのPAPを初めて可溶化精製した(JBC)。本酵素の性質から表面膜に結合してGー蛋白質の介在下、受容体の効果器として働くアイソザイムと考えられる。(3)80KDGKの細胞特異的発現。ラット80KDGK cDNAをクローン化し、in situ hybridizationと免疫組織染色を行なった(Mol.Brain Res.)。このアイソザイムはTーリンパ球で高度に発現していることが分かっていたが、脳ではオリゴデンドログリアに限局して発現している意外な結果となった。(4)DGK cDNA過剰発現実験。フィブロブラストでCa^<2+>オシレーションとプロテインキナーゼCに対する影響を調べた(FEBS Lett.)。DGKがDGの代謝を通じてプロテインキナーゼC活性を調節している結果が得られた。(5)ヒト羊膜細胞のホスホリパーゼD活性を初めて検討した。(BBA)2。検討中の課題ー(1)これまで得られた4種のDGKホモログの共通配列に従いプライマーを合成しRT-PCRにより、ヒトtestisと肝mRNAより新しい2種のアイソザイムをコードするcDNAを得て、現在クローニング中である。(2)PAPの部分アミノ酸配列決定後DNAプローブを合成し、複数のcDNAクローンを得た。現在全アミノ酸配列を決定中である。(3)DGKとPAPの細胞生物学的検討のため、1と2で得られたcDNAを大腸菌で発現させ、家兎抗体を調製中である。

研究成果

• [文献書誌] Kanoh,Hideo: "Purification and properties of phosphatidic acid phosphatase from porcine thymus membranes" J.Biol.Chem.267. 25309-25314 (1992)
• [文献書誌] Kanoh,Hideo: "Diacylglycerol kinase and phosphatidic acid phosphataseーEnzymes metabolizing lipid Second messengers" Cellular Signalling. (1993)
• [文献書誌] Goto,Kaoru: "Gene cloning,sequence,expression and in situ localization of 80 kDa diacylglycerol kinase specific to oligodendrocyte of rat brain" Mol.Brain Res.16. 75-87 (1992)
• [文献書誌] Tao,Fu: "Abolishment of bradykininーinduced calcium oscillations in rasーtransformed fibroblasts by the expression of 80 kDa diacylglycerol kinase" FEBS Lett.307. 301-304 (1992)
• [文献書誌] Mizunuma,Masahiro: "Phospholipase D activity of human amnion cells stimulated with phorbol ester and bradykinin" Biochim.Biophys.Acta. in press. (1993)
• [文献書誌] 加納 英雄: "ホスファチジン酸ホスファターゼとジアシルグリセロールキナーゼー脂質性2次メッセンジャー代謝酵素群." 蛋白質核酸酵素. 印刷中. (1993)
• [文献書誌] 加納 英雄: "カルシウム結合蛋白としてのジアシルグリセロールキナーゼ" 生体の科学. (1993)
• [文献書誌] 坂根 郁夫: "ジアシルグリセロールキナーゼ" 実験医学. 11. 262-267 (1993)
• [文献書誌] Kanoh,Hideo: "Methods Enzymol.(Diacylglycerol kinase isozymes from brain and lymphoid tissues)Vol.209" Academic Press,San Diego, 162-172 (1992)
• [文献書誌] 加納 英雄: "DGキナーゼ Neurs sceince講座V.セカンドメッセンジャー産生酵素" 広川書店,
• [文献書誌] 坂根 郁夫: "DGキナーゼ 生物薬科学講座IV 生体膜の構造と機能" 広川書店,