研究概要 |
免疫担当細胞の情報伝達におけるプロテインホスファターゼの役割を明らかにする目的で,自己免疫疾患モデルマウス(1prマウス)およびその対照マウス由来の免疫担当細胞における本酵素の病態変異を解析した。またこれら慢性疾患における変異の機構の解明の目的で,サイトカインによる免疫応答における本酵素の動きを観察した。また1prマウスにおいては、PP1活性では,T・Bいずれの細胞でも著変を示さなかったが,PP2A活性ではT細胞では明らかな上昇を認めた。PP2B活性では,1pr脾で1.5倍の上昇を認め,これはダブルネガティブT細胞における高活性によることがわかった。チロシンホスファターゼ活性については,可溶画分で病態による上昇を認めた。次にサイトカインによる免疫応答では,CTLL-2をIL-2で刺激し,経時的に本酵素の動きを観察した。CTLL-2をIL-2でインキュベートすると,直ちにPP1のポテンシャル活性が減少した。この減少は,刺激後20分で最大に達し,全体の20-30%に達する。また一過性で,20分までは減少,その後は上昇し,45分でコントロールレベルまで回復した。IL-2濃度は,0.025nM以上でみられ,これはIL-2の細胞増殖刺激効果の発揮する濃度とほぼ同程度であった。このPP1活性減少にかかわる分子種の細胞内局在を調べたところ,細胞質に選択的にみられ,顆粒画分は不変であった。IL-2刺激では,PP2A,PP2Cの活性は不変であったので,この現象はPP1分子に特異的にみられる。またCTLL-2細胞以外にも,C57BL/6マウスからConAによって誘導されたT細胞においても,同様の応答が確認された。またPP1の抗体を用いて,PP1蛋白を定量したところ,IL-2刺激によって変化はみられなかった。以上の知見より,IL-2によるPP1の変動は,転写・翻訳よりもリン酸化などの2次修飾によると結論される。
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