血液幹細胞、前駆細胞の増殖、分化は、骨髄を始めとする造血組織の微小環境により調節を受けている。この造血微小環境は、組織内の間質細胞により形成されると予想されるので、我々は、マウス骨髄、脾臓、胎児肝臓などの造血組織の間貭細胞を株化し、これを用いて、生体内と同様の微小環境の再構築を行うことを目的としている。これまでに、三つの組織から、合汁百クローンに及ぶ間貭細胞株を樹立した。これらの細胞株は、内皮様、前脂肪細胞、線維芽細胞様などの形態的特微をもち、MーCSF、GーCSFなどの産生能に差が認められるが、多くの細胞株でSCFの産生が認められる。また、これら間貭細胞株は、赤芽球、題起球、マクロファージなどのコロニー形成能に著名な差があり、微小環境を構成する間貭細胞株は、造血支持機能に特異性があることが示された。この中で、とくに赤血球造血支持機能の分子生物学的解析を行ない、次のような結果を得た。 (1)赤血球送血支持能をもつ間貭細胞株は、SCFを産生しエリスロポエチン感受性の赤芽球前駆細胞のC-Kitを介して増殖シグナルを与える。 (2)間貭細胞と前枢細胞とは直接の接着を必要とし、接着にはVLA4インテグリンが必要である。 つぎに、血液幹細胞の維持、増殖に必要な間貭細胞株を、血球の長期継続的産生能を指標として検索し、数種のクローンを選別した。 今後、これら間貭細胞株を用い、生体内と同じ能力をもつ造血微小環境の構築を目指す。
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