好中球の活性酸素生成に関する研究を行い、次に述べる成果を得た。 1.無細胞系を用いた研究 (1)シトクロムb_<558>に関する研究 NADPHオキシダーゼは、フラビン(FAD)蛋白質とシトクロムb_<558>とからなると考えられてきたが、フラビン蛋白質およびNADPH結合蛋白質の実体は長い間不明のままであった。我々は、シトクロムb_<558>の大サブユニットのcDNAから推論したアミノ酸配列中に、他のいくつかのフラビン蛋白質のFAD結合部位およびNADPH結合部位と似た配列があることを見出した。 (2)Srcホモロジー3領域のNADPHオキシダーゼ活性化における役割 NADPHオキシダーゼの構成成分の1つである細胞質因子p47^<phox>は、Srcホモロジー3領域を2ヶ所にもつ。このSrcホモロジー3領域とグルタチオンS-トランスフェラーゼとの融合タンパク質(p47-SH3-GST)は、無細胞系でのNADPHオキシダーゼの活性化を濃度依存性に阻害した。p47-SH3領域は、休止時にはp-47^<phox>のC末端側に依存するプロリンを多く含む領域によってマスクされており、オキシダーゼの活性化剤であるアラキドン酸やドデシル硫酸ナトリウムを反応系に加えると、このマスクがはずされp47-SH3は、膜に存在し、やはりプロリンを多く含む領域をもつシトクロムb_<558>の小サブユニット(p22^<phox>)や細胞質因子p67^<phox>と結合するようになる。これらの会合反応が、オキシダーゼの活性化に重要であると思われた。 (3)ヒト好中球のホスホチロシンホスファターゼ(PTPase)活性の調節機構に関する研究 ヒト好中球をホルボルミリステートアセテート(PMA)で刺激すると、好中球の細胞膜に存在するPTPase活性は約50%に低下した。この低下はプロテインキナーゼC依存性であり、またPTPase分子のコンフォメーションの変化によって起こっていることが示唆された。 (4)ブタ好中球NADPHオキシダーゼのGTP依存性活性化機構について これまで、ブタ好中球NADPHオキシダーゼの活性化経路にはGTP依存性と非依存性の2つの経路があると考えられていたが、我々はリコンビナントp47^<phox>とp67^<phox>を用いて、活性化には細胞膜あるいは細胞質に存在するGTP-結合タンパク質が絶対的に要求されることを明らかにした。 2.細胞レベルでの研究 電気穿孔好中球を種々刺激物質で刺激した時のO_2生成に対するいろんな阻害剤の影響を検討した結果、NADPHオキシダーゼの活性化機構には、蛋白質リン酸化酵素Cを介する経路とヒデシル硫酸ナトリウムにより活性化される経路があり、前者は蛋白リン酸化酵素Cの下流のGTP結合蛋白質とNADPHオキシダーゼの間でcAMPにより阻害を受け、後者は、cAMPによる阻害を受けないことが明らかとなった。また、O_2生成にはチロシンのリン酸化反応が関わっているが、それはホスホリパーゼCによるジアシルグリセロールの生成よりも前の段階であるという結果を得たし、さらにホスファチジン酸によるO_2生成の誘導は、ホスファチジン酸がプロテインキナーゼCよりも下流で働いていることを明らかにした。
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