研究概要 |
ミトコンドリア蛋白質の大部分はサイトソルでN末端に延長ペプチド(プレシークエンス)を持つ前駆体の形で合成され、その後ミトコンドリアに移行して成熟蛋白質に転換される。我々は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)前駆体と複合体を形成する蛋白性の因子(PBF,presequence binding factor)をウサギ網状赤血球ライセートより精製した。PBFは、OTCをはじめとする数種類の前駆体のミトコンドリア移行を促進した。一方、延長ペプチドを持たないミトコンドリア型チオラーゼの移行はPBFを必要とせず、PBF依存性と非依存性のトランスポート経路があることが示された。精製PBFの部分アミノ酸配列を決定し、マウスcDNAライブラリーのスクリーニングを行った。得られたクローンは2.0kbで、391アミノ酸残基をコードしていた。酸性アミノ酸残基と塩基性アミノ酸残基に富み、水溶性で酸性の蛋白質であることが示された。酸性残基のクラスターが3ケ所に存在し、延長ペプチドの結合ドメインの可能性が考えられる。このクローンの解析を進めるために、T7プロモーターの下流にサブクローニングして、大腸菌内での大量発現を試みた。発現したPBFは可溶性であり、全蛋白質の約10%を占めた。Q-およびphenyl-Sepharoseカラムクロマトグラフィーにより、ほぼ均一に精製された。現在、この標品を用いた解析を行っている。
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