研究概要 |
目的:血管新生はがん,慢性関節リウマチその他の炎症疾患,糖尿病性網膜症,動脈硬化などの病態や創傷治癒,胎児形成などと密接に関連している。我々は大網の細小血管由来の内皮(HOMEと略)細胞の培養系で管腔形成が観察される独自の血管新生のモデル系を樹立した。この系では増殖因子のうち上皮増殖因子またトランスフォメーション増殖因子α(EGFまたTGF-α)が細胞遊走および管腔形成を促進する活性が最も強いことを明らかにした。そこで,本研究で,1.EGF(また TGF-α)によるプラスミン系を中心とするプロテアーゼ活性の発現がヒト血管内皮細胞の細胞遊走と管腔形成に必須であるか否かを明らかにする。2.生体内で血管新生の系を樹立し定量化する。3.血管新生を惹起また阻害する作用を示す因子や薬剤の検索とその機序を明らかにする。4.EGFやTGF-αによる血管新生の過程で新生と密接に関連する遺伝子群の単離同定を進める。 結果:1.EGFやTGF-αによる組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の発現がヒト血管内皮細胞の遊走及びゲル内の管腔形成に必須であることが明らかになった。2.ヒト角質細胞や食道癌細胞とのco-cultureによってHOME細胞はコラーゲンを含むゲル内での管腔形成を促進するが、抗TGF-α抗体によって完全に阻害することができた。3.肝細胞増殖因子(HGF)は単独ではHOME細胞のt-PAの発現も管腔形成も促進しない。しかしt-PAを同時に添加すると管腔を形成することを明らかにした。
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