研究概要 |
平成4年度の実施計画に準じて以下の点について検討した。 1.Tリンパ球-マクロファージの相互作用。ヒトの動脈硬化巣におけるTリンパ球とマクロファージの存在様式とそれらが発現している生物活性物質(インターロイキン(IL)-1、2、6、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、リンフォトキシン、IL-2レセプター)について剖検大動脈を単クローン抗体による免疫染色で検討し、IL-1,IL-6,TNF,IL-2Rを発現した細胞が、種々の進行段階の硬化巣に存在することを明らかにした。また、肉眼的には一見正常に見える若年者の大動脈内皮において、病変好発部位に一致して内皮下に活性化された、つまり、IL-1やTNFが陽性のマクロファージやIL-2Rを持つTリンパ球が見いだされることがあり、ヒトにおいても動物実験で認められている初期病変に類似Prelesional Changeとみなされる変化が存在することが判明した。 2.動脈内膜への単球・マクロファージの侵入機序。独自に動脈内膜を仮想した3次元立体培養装置を開発し、これを用いてin vitroにおいてヒトのfatty streakに類似した病変の作製に成功した。即ち、単球と新鮮な低比重リポ蛋白を内皮細胞に被覆された“動脈"の内腔にインキュベートすると、内腔より内皮下に単球が侵入しマクロファージとなって集簇し、時間の経過と共に胞体内に脂質を蓄積し、ヒトに見いだされる脂肪班に類似した病変へと変貎した。 3.内皮細胞の動脈硬化病変形成により機能的・形態的変化。ヒトの大動脈におけるエンドセリンの局在と遺伝子発現について検討し、内皮細胞におけるエンドセリンの発現が一部の高齢者において亢進していることが判明した。また、少量ではあるが中膜筋細胞でもエンドセリンが産生されていた。
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