平成5年度の実施計画に応じて以下の2点に大別して記述する。 (1)Tリンパ球-マクロファージの相互作用についての検討 a.ヒトの動脈硬化巣におけるマクロファージの存在様式とそれらが発現している生理活性物質についての研究を完成させ、論文として発表した。 b.ラットの大動脈病変について、走査並びに透過電顕による観察に加えて、en face double immunostaining法を独自に開発し、経時的に観察した。この方法の導入により、マクロファージのみならず、従来考えられていた以上に多数のTリンパ球が特に病変形成の初期に重要な関与を示していることが明らかとなった。 c.糸球体硬化の発生にマクロファージ(恐らくはTリンパ球も)が重要な役割を演じ、病変発生の過程が動脈硬化のそれときわめて近似していることを明らかにした。 (2)動脈内膜への単球-マクロファージの侵入機序 a.動脈内膜への単球の侵入に関連した単球と内皮細胞の細胞相互作用を、単球の内皮細胞との接着、接着した内皮面での運動能、接着分子の関わり、単球-内皮細胞相互作用による内皮細胞障害の発生などについて検討した。 b.種々の程度の動脈硬化病変を有するヒト剖検大動脈より内皮細胞を培養し、かなりの症例数の内皮細胞をこれからのin vitroの細胞相互作用実験に使用すべく凍結保存した。
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