平成6年度の実施計画に応じて以下の2点に大別して記述する。 (1)Tリンパ球-マクロファージの相互作用についての検討 a.ヒトの動脈硬化巣におけるマクロファージ、Tリンパ球、平滑筋細胞の存在様式を走査電顕により観察する方法を確立した。そして、ヒト大動脈内膜において、肉眼的に正常な若年者の病変好発部位、早期の脂肪班におけるTリンパ球とマクロファージ(泡沫細胞)の密接な関係が3次元的に確認された。 b.Tリンパ球が動脈硬化の初期発生にいかなる役割をはたしているかを明らかにするために、ヌードラットに高脂血症を負荷し、その際発生する大動脈病変の形成過程を対照動物と比較検討した。対照(nu/+)ラットの大動脈病変に比し、ヌードラット(nu/nu)ではTリンパ球の浸潤はなく、さらにマクロファージの浸潤も軽度で、病変発生がより局在化した。ところが内膜に浸潤したマクロファージの脂肪蓄積の程度を画像解析により検討すると、病変は小さく限局しているにもかかわらず、病変を構成したマクロファージは有意に大きく、細胞内脂質が豊富に蓄積されていることが判明した。つまり、Tリンパ球の欠如はマクロファージの集積による病変形成を抑制するが、一旦内膜に浸潤したマクロファージの脂肪蓄積に対しては促進的に作用していることが判明した。 (2)動脈内膜への単球-マクロファージの侵入機序 a.これまでの成果を基礎に、動脈硬化が発生する大型動脈内膜へのTリンパ球の侵入機序の解明へと研究内容を発展させ、そのために必要なin vitroの実験モデルの作成を試み、現在、そのモデルを使用した研究を行っている。
|