研究概要 |
これまで、主としてRosenfeld博士より提供された抗ラットPit-1蛋白ポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学的染色を施行している。その結果これまでに、(1)Pit-1蛋白の検出にパラフィン切片を用いる場合、パラホルムアルデヒド固定が最も良いことを確認し、(2)ヒト下垂体腺腫において、非機能性腺腫に比べ、GH産生腺腫、TSH産生腺腫にPit-1蛋白の発現頻度が高いこと、(3)10カ月齢の雄TgM下垂体に腺腫が認められ、多くの腺腫細胞がGH,PRL,TSH陽性であり、さらにPit-1蛋白陽性であることなどを見いだしてきた。 これまでに得た上記の基礎的知見、当初の研究計画を踏襲し平成5年度では以下の新しい知見を得た。 1)ヒト下垂体腺腫において、GH産生腺腫、TSH産生腺腫に高頻度にPit-1蛋白が腺腫細胞の核に陽性となった。また同時に、TSH産生腺腫がGH,PRLなどを含めた多ホルモン産生腫瘍であることが判明した。 2)ヒトGRFトランスジェニックマウスにおいて、6、8カ月下垂体では、GH,PRL細胞の過形成のみ見られたが、10カ月下垂体において腺腫が認められ、TSHの発現が腺腫発生と関連するものと考えられた。Somatomammotroph(GHとPRLを同時に産生する細胞)、TSH陽性細胞とPit-1蛋白との細胞レベルでの検討は次年度に行われる予定である。 3)昨年度作製した抗ヒトPit-1蛋白ポリクローナル抗体の、免疫組織化学的染色への応用の可能性を検討した。ヒト下垂体パラフィン切片上で本抗体は100倍希釈で、前葉GH,PRL細胞核内で陽性となることが判明した。次年度でのヒト下垂体腺腫での検索に使用可能である。
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