研究概要 |
ラットの糸球体上皮細胞の特異的抗体と知られているデスミン、1A,5-1-6の認識部位は、中間系フィラメント、上皮細胞の機能側表面、及び足突起関連構造とそれぞれ異なっているが、それらの機能はよく分かっていない。糸球体上皮細胞は血液濾過の最先端に位置している構造から、腎の利尿、限外濾過機能を司っている筈である。しかし、その機能は知られていない。そこで、濾過調節および機能異常としての蛋白尿発現、電顕上の変化(足突起融合)をアミノヌクレオシド腎症(adenine,deoxychoforomycin,prednisoloneを前投与して蛋白尿の出現を阻止したラット群を加えてある)で調べた。その結果、デスミンの発現は蛋白尿が起こって48時間後に出現し、足突起の融合状態と無関係であることが分かった。また、1Aは蛋白尿の発現状態でも正常と同じく上皮細胞表面に保たれていることが分かった。5-1-6は蛋白尿の発現時には明らかに減少していることが示された。また、上皮細胞の足突起融合と蛋白尿の発現と関係のない形態変化であると分かった。以上から、現時点でラット糸球体上皮細胞の特異的抗原を認識している抗体を用いても、濾過調節の異常、特に蛋白尿の発現機序の詳細は解明できなかった。 糸球体上皮細胞に心房性ナトリウム利尿ペプチドのスブクラスA,Cの受容体があることを蛋白レベルと、mRNA ribonuclease protection assay,in situ hybridizationで証明できた。糸球体上皮細胞が電解質特にナトリウムを介し、濾過調節をする機構を持つと考えられた。
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