研究概要 |
我々が樹立したリンパ腫好発系SL/Khマウスのウイルス遺伝学的解析を行い、次の知見を得た。 (1)SL/Khリンパ腫は細胞表面マーカーB220,6C3を発現、Ig,Thy-1.1,Mac-1は陰性であった。遺伝子解析からIgHはクローナルに再編成、IgLは胚型、surrogate light chainの構成蛋白λ5を発見するほか、RAG-1,RAG-2の発現もみられ、Pre-Bの分化段階であった。病理学的にリンパ節腫大、肝脾腫をきたすmajor typeと、骨髓に増殖が限定されるminor typeが区別されるが、両者の分化段階の差異はまだ把握されていない。 (2)Ecotropic provirusを持たずリンパ腫の自然発生もないNFS/N系とのF1,退交配系を解析した。SL/Khの6つの内在性ecotropic provirusのうち2つが発現していること、各々は異なる染色体上にあること、発現座位のうちの一つは第7染色体Gpi-1座位と連関しAKV-1とみなされるが、このウイルスの発現がリンパ腫発生に必要であることが示された。また、第二の発現座位は退交配系で骨髓性白血病の発生に関与していた。リンパ腫のDNAには新たに獲得されたプロウイルスが観察されるが、これまでのところ共通挿入部位は確認されていない。 (3)一方、SL/Khは生後4-6ケ月でリンパ腫を自然発生するが、生後3-4週の幼弱マウスの骨髓を精査したところ、B220^+,6C3^+の表現型をもつPre-B細胞が多数出現していた。この細胞集団はSLファミリー以外の実験室マウスでは極めて少なく、SL/Khと他のマウスとのF1では優性に出現していた。骨髓のpre B細胞のレベルの遺伝的な異常がリンパ腫感受性を決めているものと考えられ、更に機能的な解析を進めている。 (4)リンパ腫細胞培養株を数系統樹立した。抗マウスレトロウイルス抗体を用いてウイルス発現を調べたところ、多くのリンパ腫で組換え型ウイルスの外被抗原エピトープが検出された。
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