研究概要 |
我々はこれまでにマウスに受動免疫を賦与できる抗日本住血吸虫モノクローナルIgE抗体(SJ18ε.1)の作製に成功し、この抗体の認識する抗原分子(97kDa)が、マンソン住血吸虫においてもワクチン候補分子として注目されているパラミオシンであることを明らかにした。そこで本研究では、パラミオシンcDNAのクローニングと組換え体パラミオシンの発現を試みた。また、住血吸虫症ワクチンの開発という点から、パラミオシン免疫時のサイトカインの動態やそれに伴うエフェクター細胞の活性化について解析すべく、サイトカイン測定システムの構築を目指した。 [結果、考察]SJ18ε.1抗体を用いて日本住血吸虫成虫cDNAライブラリーをスクリーニングし、Sj97の全長をコードすると思われるcDNAクローンを得た。このcDNAクローンは866アミノ酸をコードし、そのアミノ酸配列はマンソン住血吸虫パラミオシンのそれと非常に高い相同性(96%)を示した。組換え体パラミオシンを得るため、パラミオシンcDNAを発現ベクターに組換え、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白を大腸菌内で発現させた。また、SJ18ε.1抗体の認識部位は、1329bpのcDNAによってコードされる、443アミノ酸からなる部分であることを、部分欠損パラミオシンを用いて明らかにした。 更に、T細胞由来のサイトカインmRNAの発現を、PCRにより測定する系の確立を試みた。培養マウス脾細胞からRNAを抽出し、IFNγ、またはIL-2の特異的プライマーセットを用いてRT-PCRを行った。増幅したDNA断片の検出は、アルカリフォスファターゼ標識オリゴヌクレオチドプローブを用いたサザン法にて行った。アルカリフォスファターゼと化学発光基質AMPPDとの反応はフィルムの感光により検出した。相対的定量のため、段階希釈したマイトゲン刺激脾細胞cDNAを用いて標準曲線を作製し、これとの比較を行った。PCRの増幅回数は、無刺激脾細胞のシグナルを検出可能な回数に設定した。現在、IL-4,IL-5についても同様の系の確立を進めている。また、リスザルが日本住血吸虫症に対する防御免疫誘導のよいモデルとなることを明らかにした。
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