研究概要 |
1.CSPT細胞エピトープの多様性 熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)のスポロゾイト表面タンパク質CSPの主要T細胞エピトープの多様性をタイのマラリア流行地で分離した原虫株について検討した。18株の原虫ゲノムDNAを培養より得た後、CSP遺伝子のエピトープ領域をPCR法により増幅し、プラスミドに挿入して塩基配列を決定した。その結果、ヘルパーT細胞エピトープであるTh2R,Th3R、及び細胞傷害性T細胞エピトープにおいてタイ分離株では著して変異が見られた。しかもその変異のタイプはこれまでガンビア、ブラジルで報告されているものと大きく異なっていた。しかし、もう一つのヘルパーエピトープであるCT・3Lは完全に保存されていた。これらの知見はスポロゾイトに基づくマラリアワクチンの開発に重要な意味を与える。 2.MSP1のC末端部位の原虫株間保存性 P.falciparumのワクチン候補抗原であるメロゾイト表面抗原MSP1のカルボキシル未端部位は感染防御に重要な働きをするが、その部位のアミノ酸配列の変異については野生原虫株でまだ詳しく調べられていない。そこでタイのマラリア流行地より得た原虫分離株のMSP1遺伝子3'側1.7kbの塩基配列を決定して、変異の程度を検討した。その結果、18個の塩基置換はすべてアミノ酸の変異につながっていたが、その変異はランダムではなく大きく二つのグループに分かれた。重要なことに、C末端側19kDのポリペプチド中に存在する12のシステイン残基は完全に保存されていた。このことはMSP1のC末端部のアミノ酸配列の変異は少なく、立体構造も株間で差異が少ないことを示唆する。
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