平成5年度の研究実績は以下のようになった。 1.熱帯熱マラリア原虫CSPのB細胞エピトープ多型性の検討 熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイト表面抗原CSPのテトラペプチド反復部位はCSPの主要B細胞エピトープである。この領域の対立遺伝子多型性をタイのマラリア流行地で分離された15株についてCSP遺伝子の全塩基配列を決定することにより調べてみた。その結果、7つの対立遺伝子が認められたが、CSP遺伝子の中でも変異は反復部位とカルボキシル(C)末端側のT細胞エピトープ部位に集中することが明らかになった。さらに反復部位の変異のパターンを詳細に検討することにより、反復単位の欠出・挿入、及び、反復部位における対立遺伝子間の遺伝子内組換えによって反復部位の多型性が生じることが示唆された。 熱帯熱マラリア原虫MS1の多型性の検討 熱帯熱マラリア原虫のメロゾイト表面抗原MSP1のアミノ末端側とC末端側ポリペプチド部位には免疫防御に関与すると思われるB細胞エピトープ群が存在する。昨年に引き続き、タイより分離された原虫株について、MSP1遺伝子の両部位の塩基配列を決定して検討してみた。合計で19株調べたところ、N末端およびC末端側の保存領域内の変異はいずれもDimorphicな変異であることが確認されたが、N末端側はC末端側よりも変異が約2倍も激しいことが明らかになった。さらに、N末端側の変異領域ブロック4においては、対立遺伝子間で遺伝子内組換えを起こしてMSP1の多型性の形成頻度を高めていることも示唆された。C末端の半保存領域と変異領域にはMAD型とK1型のMSP1対立遺伝子間に遺伝子内組換えは認められなかった。
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